河原 光博 (37期)
村井 基彦 (37期)
今年度、山田会長の発案で「栄光学園同窓会のビジョン検討」特別委員会が設置されました。8月20日の第1回以降、概ね月一回のペースで委員会が開催され、2020年2月までに第7回を重ねました。本稿では、これまでの議論の経緯と、現時点までの議論のまとめをご報告します。
なお、特別委員会の設置経緯・目的および第1・2回での議論の詳細は、前号(92号)のALUMNIで紹介されております。そちらもご参照いただきたくご紹介しますとともに、内容の多少の重複はご容赦ください。
「栄光学園同窓会のビジョン検討」特別委員会は、山田同窓会会長のリーダーシップのもと令和元年8月に時限的な委員会として設置されました。背景として、下記の様な視点が課題として示されました。
学園が70周年を越え、毎年180名余りの新規会員が加わりつつ1桁期台がご健在、ご活躍であることから、会員数は12,000人余りの大きな組織となった。
同窓会の基本的仕組みは、当初の少人数でスタートしたときから12,000人になってもそれほど変わっていない。
栄光学園を取り巻く社会情勢も、同窓会と同様に常に変化している。
同窓会としての活動を、同窓会の役割や学園との関係などとの意義付けから整理すべきではないか。
つまり、同窓会の活動の軸を意識しながら、同窓会の活動を時代に合わせてフィットさせて行ける様な仕組みの在り方(これが広義の「ビジョン」と解釈しています)を議論することが、本特別委員会の設置目的です。
なお、本特別委員会は常任委員会や執行委員会に比べるとやや若めで、委員長を河原光博(37期常任委員)、副委員長を村井基彦(37期常任委員)とし、山田会長、関根副会長、増木副会長、前山事務局長、島崎活動サポート部長、高橋広報部長、近藤財務部長の執行部に加え、菅原信夫(18期)、藤野啓介(28期幹事)、中路喜之(29期常任委員)、米山操(30期幹事)、森厚(31期幹事)、内藤文樹(32期常任委員)、大須賀喜彦(39期常任委員)、西條達(40期幹事)、齋藤琢郎(42期幹事)、米村俊彦(43期常任委員)、石田明久(51期常任委員)を加えたメンバーで構成されました。
第1回~第3回までは同窓会の活動について、かなりフリーにディスカッションされました。とはいえ、現状の事実認識は共有しておこうということで、会員が10,000人を超えたここ4~5年(2013年5月~2017年5月 菱沼会長、2017年5月から山田会長)の同窓会活動について、目的別に整理してみることから始めました。図1はそのときの整理に利用したチャートです。
図1を見ていただくと、この間の大きな課題は「栄光学園の70周年記念事業」で、同窓会活動の多くは、この70周年記念事業への協力のために割かれていることがわかります。同窓生向けの企画としては、OBフォーラムも一部は70周年記念事業との連携を図りながら、年に1~2回のペースで開催されており、同窓生が集うイベントをかなり積極的に実施しています。また、同窓会の基盤となる名簿について「EACON」を導入、また、情報発信のベースとなる「同窓会ホームページ・リニューアル」が実施されており、同窓会としてデジタル媒体を利用できる環境が整備されつつあることがわかります。
最近の活動の整理と共に、活動の方向性についても様々な議論がなされました。栄光学園同窓会会則も踏まえつつ、議論で挙がってきた同窓会の活動目的のキーワードを可視化してみたものが図2になります。
図2は、同窓会会則 第2条で謳われている「同窓会の目的」を可視化しつつ、議論で挙がってきたキーワードを組み込んだイメージ図になっていると思います。
本会は、栄光学園出身者間の親睦を図ると共に、母校で学んだ高い理想と教養を保ち母校の発展に寄与し、社会に貢献することを目的とする。
当たり前のことですが、同窓会のこれまでの活動もこれからの活動も、「OB同士の交流促進」「母校への貢献」の少なくとも一方には分類されています。ただし、「母校への貢献」については、学園の主体的な教育方針を踏まえて実践するというスタンスになります。教育の主体は学園であり、同窓会はあくまで「学園の教育方針をサポートする」というスタンスであることについても、あらためて共通認識がなされました。
こうしてみますと、20年近く継続的に実施されているOBゼミは、学園の教育方針を踏まえつつ、同窓会として講師の人選・派遣という「母校への貢献」を実践しただけでなく、担当の期を自動的にバトンタッチする仕組みを設けたことにより、同窓会の役割である「OB同士の交流促進」の一つとして「同期がつながる」という仕掛けになり、建設的に定着したことがわかります。
企画・活動を担当する期をバトンタッチしていくという仕組みは、「活動の継続性確保」にとって、実は大切なキーワードになります。つまり、同窓会の多くの活動はボランタリーな行動で支えられています。企画を実行する中で、幅広い世代がメリットを享受できるように運営することは簡単では無いのですが、同時に「幅広い世代の協力も得ながら」運営するのは、意識をしないと意外と難しいことなのだと改めて感じます。
第4回以降は卒業後の時間軸を意識した議論がなされました。これまでの議論を踏まえていくと、同窓会の活動を、世代交代しながら継続的に活性化していくためには、特定の世代に対し、その世代にあわせた「刺激」を与えることが有効であることが浮かび上がってきたためです。図3は、議論の中で出てきた「卒業後の時間軸」をチャート化したものです。
もちろん、卒業生は一人ひとりの人生を歩みますし、同窓生と同窓会との関わり方は個々で全く異なると思います。ですが、同窓生のつながりについて考えていくと、どの世代でも「同期」が大きな軸になっていると思います。また、早いうちから「同期」がしっかりとつながっている期は、結果として、同窓会の活動を支援してくれる人材を送り込んでいる傾向があるように感じます。各期に確実にいるであろう、「世話役」となる人材を発掘するきっかけとして、「同期会」の開催は有効な手段だと思います。おそらく、本稿を読まれている方の中でも、思い当たる点がある方がいらっしゃるのではないでしょうか。逆に同窓会本部を中心に考えると、「同期会」を開催してもらうことが、同窓会の活動を支える人材発掘の登竜門になっているということになります。
さて、ここで問題です。「栄光学園同窓会会則関連諸規程」の「栄光学園同窓会「同期会」に関する規程」を読むと、「卒業後○年目及び □年目および△年目に開催する同期会への補助金」が同窓会から得られることがわかります。○と□と△にあてはまる整数はそれぞれいくつでしょうか。
答えは、同窓会のHP内にありますので、そちらをご覧くださいと言いたいところですが、それではあまりに不親切とおしかりを受けそうなので、正解を記載しておきますと、○=10、□=25、△=50です。つまり、該当する期は毎年3つずつあります。読者の皆さんは是非、自分の期が該当する年を確認しておいてください。
また、議論の中で浮かび上がってきたのは「部活動」のつながりです。幸いなことに栄光では、生徒は必ず何れかの部に所属しなければなりません。卒業後の「部活動」の役割は、一つは同じ部としての「世代を越えたつながり」と言う「縦糸の役割」を、そして、卒業後の同期をつなぐ小グループとしての「横糸の役割」を持っていると思います。また、卒業後も引き続き、「部長」や「キャプテン」が、部活の中で「同期のハブ的な存在」になり続けていることが多いのではないでしょうか。
正直に言うと、これまでは「部活動」のつながりを、同窓会としてあまり積極的に活用できていなかったように感じます。ですが、「部活動」の潜在力を積極的に活用していくことについては、本特別委員会の議論の中でも、おおよそ異論は出ませんでした。
そうは言っても、部単位でOB会を結成し、定期的にOB会を実施している部もあると思います。本稿の読者の中にも、自分が所属していた部がどの様な活動をしているかわからない、あるいは部の先輩や後輩とつながっていないという方もいらっしゃると思います。
現在の「同窓会名簿」の役割を果たしているEACONでは、所属した部活動による絞り込み検索機能があります。ぜひご活用ください。EACONでは他にも、出身大学や勤務先や業種等による検索など、従来の「冊子版」同窓会名簿ではできなかった様々な「つながりのきっかけ」を掴むことができます。操作性も日々レベルアップしており、従来より格段に使いやすくなりました。スマートフォンでの活用もオススメです。少し余談になってしまいましたが、議論の紹介に戻ります。
第7回では、前回までの議論をベースに年代別の同窓会事業・イベントを整理し、同窓会は各年代にどのような関わり方をしているのか、同窓生は、同期の「横軸」や年代を越えた「縦軸」を通じ、どのように同窓生同士のコミュニティにコミットしていくのか、について議論しました。図4は、議論のたたき台として、同窓会が支援・企画していくイベントと対象年代を整理したものです。
図4で、太枠線で囲み表示しているものが、これまでの議論を踏まえつつ、同窓会が今後積極的に関わりながら、各年代に仕掛けて行こうというイベントとそのタイミングです。
この中にはすでに実践されているものも、これまで全く実践されていないものもあります。例えば、50代後半からの「各自がフリーで「開催できる・参加できる」イベント支援」では、栄光同窓生が社会人として培ってきた様々な知見・経験やつながりを、会社や業界や年代の枠組みを越えて、社会に還元できる場を提供するような活動の支援等も、アイデアとして議論されています。
世代によって感じ方は違うとは思いますが、図3と見比べながらイベントを確認していただけると、企画やイベントの趣旨については、おそらくご理解いただけるのではないかと思います。
あとは、同窓会がどの様に企画もしくは支援して行くのかということになります。先ほども触れましたが、同窓会として「継続的」に活動を企画もしくは活動支援するのか、イベントにあわせ「タイムリー」に企画もしくは活動支援するのかの判断も大事になると思います。継続的に企画・支援を行っていくためには、活動主体が常に若返って行く、あるいは順番に世代を引き継いで行く仕組みが必要になってくるでしょう。一方、タイムリーな企画・支援については、その企画に賛同する幅広い世代が関われる仕組みが必要になってくると思います。このあたりの企画・活動支援の判断軸については、今後の特別委員会において議論し、具体化して行く必要があると思います。
同窓会費の問題は、必ずしも本特別委員会の主題ではありませんが、同窓会のビジョンを中心に同窓会活動について議論していると、各活動を支える財政基盤である「同窓会費」が、議論の合間合間に顔を出して来ました。同窓会費については前号にも掲載されていますので、そこから引用しますと、『現在の同窓会会費は一人年間2,500円、会費免除外の会員は約9,000人。会費納入率は2018年度47.0%、2019年度44.9%。初年度の入会金などを加えると、平均して年間の収入総額は12,000千円前後。これが、同窓会活動の目的別に次のような割合で支出されています。』
図6はその内訳を円グラフにしたものです。支出項目をみると、実質的には固定費が約4割強で、定常的に活動している支部などの活動費が約5割です。前節において非常にうまくいっていると紹介したOBゼミについては、その支出は実は5%に満たない額ということがわかります。
それとは別に、前号での記述で気になるのは、会費納入率が45%前後であることと、75歳以上が免除になるということは、つまり会費納入対象会員数は180人×(75歳-18歳)≒10,000人以上にはならない、ということの2点です。
この事から、同窓会の活動費を増やすには、「会費の納入率を上げる」、「会費を上げる」、「その他からの収入を得る」の3つしか無い事がわかります。幸いなことに、これは「3択」ではなく、複数の方法を選択することも可であるということです。本特別委員会の議論の底流にも、同窓会員に有意義と感じてもらえる企画や活動支援を行うことで、自然と会費納入率が上がる、逆にそのような企画や支援とは何かという命題が流れていると思います。
このような考え方をベースに考えると、同窓会の活動に対し年会費の2,500円が適正な金額なのかの評価は、「活動の実績」が問われる事になると思います。同窓会の活動に年額2,500円以上の価値を感じないと感じていらっしゃる方には年額2,500円に足る活動のイメージを、年額2,500円以上の活動をしているなぁと思われた方には、2,500円以上の価値があると感じる活動のイメージや適正に感じる会費額を、広くタイムリーに同窓会が汲み上げる仕組みがあればいいなぁ、と議論を通し感じています。
年会費とは別の収入の手段については、委員会の議論の中で「栄光のブランディング」というキーワードで少し議論がなされました。平たく言えば栄光学園グッズの企画・開発と販売と購入・寄付になります。これについては、母校のイメージにも直結することですので、同窓会の意向のみで実行するのは難しいと思います。しかし、安定した収入につながる効果的なアイデアの一つだと思いますので、議論の中でこの様なアイデアも挙がったことを、この場を借りて報告させていただきます。
ここまで、特別委員会の活動報告として、多少の主観を交えながら記してきましたが、山田会長より「特別委員会として同窓会のビジョンの議論を主導して欲しい」と言われたときに、どうしたものかと思いました。山田会長は就任時より、“Men for others、with others”をベースに、“人を繋ぐ、人が繋がる同窓会”というスローガンを打ち出していらっしゃいました。今回の特別委員会での議論を通して、“Men for others、with others”は栄光の同窓生を繋ぐ普遍的な思想感であることを実感しました。また、同窓会とは、人と人との関係がとかく希薄になりがちと言われる現代の社会において、“人を繋ぐ、人が繋がる”ためのお手伝いをし続ける役割があると再確認した次第です。
その思想感を踏まえつつ、「10代後半から80代までの同窓生が、栄光学園の卒業生としての繋がりを実感し、誇りを持って活き活きとした人生を送る」、この無形の解を探求することに、同窓会が少しでも会員の皆様のアシスト役を果たせるように、今後の検討では、もう少し具体的なアクションプランを提示できるよう、引き続き議論を続けていきたいと思います。