栄光の海はイシガニの宝庫でした
田浦時代、中学校舎の前の一段低い所に、平屋で長屋の職員宿舎があり、その先は海でした。海に降りるのは禁止でした。海には大きな石がゴロゴロしており、砂地も混在していました。私は海があると何かいるかと覗く性分なので、大潮の干潮時ゴロタ石に降り石の間を覗いて見ました。
すると驚いた事に大きなイシガニがうじゃうじゃいました。
イシガニは、内海に多いワタリガニ(左右の第4肢がオール状で泳ぐカニの総称)の一種で、オスの老成個体はツマグロといって黒紫色になり、大きなガザミ位の大きさです。肉質はガザミより上で、みそやメスの内子は絶品です。しかし、大量に取れないので魚屋で見ることはまずありません。素手でとるのはハサミで挟まれる危険があり、挟まれたら猛烈に痛いのですが、イシガニは脅かすとハサミを振り上げます。ハサミは節がくびれているのでハリガネの先をU字形に曲げて節に引っ掛けると簡単にとれます。ある休日バケツ一杯のイシガニを取って、家に帰ってみんなで美味しくたべました。
お袋は又とって来なと言いましたが、次は堀先生に見つかり、ひどく𠮟られてもうとれませんでした。ちなみにおおきなアサリも沢山取れましたが、アサリは少し重油臭く食べられませんでした。戦前は軍の施設だったので、アサリもイシガニも沢山いたのだと思います。また大学卒業以来50年ぶりにあった友人の最初の一声は、「おい水野相変わらず素っ頓狂なことをやっているのか」でした。
11期 水野 信義