ホーム活動報告・会報記事寄稿・投稿紫金花の海を泳ぐ 蘭州近況(2016年9月)

寄稿・投稿紫金花の海を泳ぐ 蘭州近況(2016年9月)

2016年新学年

中国では秋が入学の季節です。蘭州大学では今年の新学年は8月29日から始まりました。
新入生の登録も早々に行われ、その週には軍事訓練が始まりました。今年の日本語科の新入生は1クラス25名で、そのうちなんと男性が13名でした。男子学生が過半数を超えるのは初めての経験です。出身地域はバラバラですが、甘粛省が5名、なぜか天津市の出身者が4名も居りました。民族は満州族と土家族が各1名、他は全員漢族でした。
1年生の授業は軍事訓練を終えてから9月下旬に始まります。私も会話の授業を1コマ持っており、これまで2回ほど授業を行いましたが、まだ顔と名前がつながりません。
新入生たちはもちろんでしょうが、教えるこちらも今年はどんな学生が来たのだろうと期待に胸がふくらみます。

2016新学年新入生の軍事訓練

海外へ出る学生たち

最近、学生たちがよく海外へ出るようになりました。3年生のクラスで夏休みに何をしたか聞いてみると、家族とヨーロッパ旅行が1名、アメリカで語学研修が1名、日本へ観光旅行が2名もいました。
10年前の学生たちが国内旅行すらほとんどしたことがなかったことを比べると、隔世の感があります。
蘭州大学では世界の諸大学と提携していて、交換留学の制度があります。奨学金が付いたものも若干ありますが、ほとんどは学費が免除で、渡航費、生活費を負担するものが普通です。期間は半年と1年ですので、2年生の後期学期か3年生の前期学期に留学します。今年の3年生は11名がこの制度で留学しています。内訳は鳥取大学が5名、秋田大学が3名、埼玉大学が2名、信州大学が12名でした。
現在日本のどの大学でもこうした留学生を積極的に受け入れており、留学生の構成をみると中国、韓国が多数派を占めるようです。
留学生たちは、日中は授業に出席し、夜間や休日にアルバイトをして小遣いをかせぎます。そして、夏や冬の季節休暇に日本の各地を旅行して楽しんでいます。
留学が終わると、彼らは日本語にそれなりに自信を持って戻ってきますが、中には何の進歩も見られぬ学生もいて苦笑させられます。
現在、新3年生は2クラス25名ですが、11名が留学しており、6名と8名の少数クラスになってしまいました。授業をしていても何となく寂しげです。まあ、今学期は少数精鋭に懇切丁寧な授業を心がけようと思います。

紫金花の海を泳ぐ

甘粛省に金昌市という地級市があります。河西回廊の武威市と張掖市の境目にある小さな市で、人口も46万人ほどです。武威や張掖には行ったことがありますが、金昌市はいつも通り過ぎるだけで観光したことがありませんでした。
そこで、中秋節の連休を利用して、思い切って出かけてみました。
蘭州から金昌まで380kmあります。以前は蘭州から河西回廊へ出る時、祁連山脈南端の烏鞘嶺という3000mを超える峠を越えていましたが、最近は高速道路が整備され烏鞘嶺の下にトンネルが掘られ、所要時間がかなり短縮されるようになりました。それでも、蘭州からおよそ5時間半、金昌のバス・ターミナルに16時ごろ着きました。
夕食を兼ねてホテルの周りを散歩してみました。金昌は落ち着いた地方都市で、高層ビルが少なく、空が広く見えます。町のあちこちに「紫金花生態都市」という看板やポスターが貼られていました。ホテルで聞くと、現在花が咲いているとのことなので、翌日の観光は紫金花の鑑賞に決めました。

烏鞘嶺の近く、遠方に祁連山脈が

金川公園から市内を望む

翌朝、タクシーで紫金花公園へ行きました。意外なことに公園は市内にありホテルからあまり離れていませんでした。
公園に入って驚きました。辺り一面紫金花が咲き誇り、紫の海に入ったようでした。広さは1キロ平方ほどでしょうか、東側に低い丘があるだけで、あとは平らな公園が、腰の高さほどに咲いた紫金花で埋め尽くされていました。少しして照り映えた紫に目が慣れてくると、花園の中にいくつかの遊歩道が見えました。まだ朝早いせいか、参観者は数えるほどでした。遊歩道を歩いていると、遠方を歩いている参観者がまるで紫の海を泳いでいるように見えました。

烏鞘嶺の近く、遠方に祁連山脈が

公園に咲いている紫金花はラベンダーではありません。中国名では柳葉馬鞭草と言い、日本でもバーベナの一種でヤナギハナガサと言うようです。それにしても1キロ平方もの広大な敷地にどうやって均等に群生させるのでしょう。園丁の技量に感心するばかりです。
金昌市では紫金花公園の一帯を生態花園として開発中です。
紫金花公園の西側の一画では花の博物館を建設中で、その敷地の広々とした庭園は可憐なコスモスで敷き詰められていました。金昌市が花園生態都市であるとは知りませんでしたが、ふらりと寄ってみて思わぬ幸運に恵まれました。

柳葉馬鞭草

コスモスの花園

紫金花の名札

金昌市のメイン・ストリート

コスモス

大川 豊 (14期)