1期は江澤増雄君の『教会ラテン語への招き』を紹介します。
この本は、イエズス会会員田淵文男神父(神学博士)監修のもと、2002年8月、サンパウロより出版されました。その後、江澤君は2004年『教会ラテン語・事始め』、2006年『福音書のラテン語テキストを読む』、『教会ラテン語・文法のあらまし』をサンパウロから出版しました。
第IIヴァチカン公会議(1962年~1965年)以後の日本のカトリック教会に於いては、ローマカトリック教会の「公用語」であるラテン語とグレゴリオ聖歌に対する教会員の関心も知識も低下しています。司祭養成機関である神学校のカリキュラムでも、ラテン語は必須科日ではなくなっています。こうした現状下、一般信徒に教会ラテン語への関心を持ってもらいたいとの願いが、本書の根底になっています。以下、江澤君の本書で述べる教会ラテン語の本質とその歴史に就き、私見も織り交ぜつつ紹介してまいります。
第IIヴァチカ ン公会議前は、主日ごとに信徒が与る教会でのミサは、司祭と侍者が交互に口にするのは、説教を除いて始めから終わりまで、総てラテン語の祈りで、その間、荘厳な グレゴリオ聖歌が歌われました。
私も中2の時受洗し、 [“My Sunday Missa L'' with Latin English Ordinary]と云う小冊子(今でも持っています)で侍者のラテン語を懸命に覚えミサ答えをしました。今でも、例えば、Confiteor(告白の祈り)「Confitor Deo Omnipotenti・・・・・ Mer culpa Mer culpa Mer maximaculpa ・・・・」など諳んじております。
第IIヴァチカン公会議に於いては、それまでラテン語で行われていたミサ及び典礼の諸儀式が各国語で行われてもいいとなりました。この各国語で行われるミサは1970年度版ローマミサ典書に従う「ノヴス・オルド」ミサ (Novus Orudo Missae)とよばれます。日本カトリック教会に於いてもこの日本語ミサが殆どとなり、ラテン語ミサに取って代わったかの様に思われております。小教区のおける主日のミサはすべて、日本語によるミサと云っていいでしょう。しかし、第IIヴァチカン公会議後制定された『典礼憲章』(第36条 第116条)でも自国語も使用は認めるが、基本はラテン語典礼であり、グレゴリオ聖歌が首位を占めるとあります(ヴァチカンの道誌第19巻 P22)。
加えて、ベネディクト16世前教皇は、2007年7月7日付けにて、自発教書『スンモール・ポンティフィクム』自発教書)を交布されました。ここで単一のローマ式典礼に、2つの様式、トリエント・ミサ (ラテン語ミサ)とノヴスオルド・ミサ(自国語ミサ)の併存を確認公認しました。即ち、荘厳で、美しく、聖なるラテン語ミサは、日本語ミサに取って代わられたわけでもありません。
江澤君は、カトリック教会が2000年に近い時をかけてはぐくみ育ててきた、典礼、神学、哲学、思索、信心などの道具となってきた言語はラテン語に他ならないとしております。こうした観点から、ラテン語を通してカトリシズムとその世界観を知ることに、本書は極めて有意義な書であります。
熊岡 醇 (1期)