寄稿・投稿54期、この1冊

54期は小林航太君の執筆した『東大卒筋肉弁護士のもう後がない状況でも確実に結果を出せる超効率勉強法』(主婦と生活社)を紹介します。
小林君はNHKの「みんなで筋肉体操」という番組で俳優の武田真治さん、スウェーデン出身の庭師・村雨辰剛さんと共演し、2018年末の紅白歌合戦にも出演しました。彼はコスプレが趣味であり、そのために筋トレを始めたそうです。
勉強本も、筋トレ本も、オタク本も、たくさん出版されています。しかし、3つ合わせた本書は、カオティックで新鮮だと思いました。彼は単なる学歴エリートではありません。大学で怠けていた時期がけっこう長く、東大を6年かけて卒業しています。「本職は極度の面倒くさがり」と認めてしまう人間臭さが、本書の魅力を増しているように思えます。
本書は、中学受験、東大受験、司法試験について、人生経験と絡めながら語られており、幅広い年代にお勧めできます。怠け癖がついてしまった大学生や、「神童だったはずの我が子がグレてしまった!留年してしまった!」と子息の放蕩に悩む貴方も、一読の価値があると思います。
勉強法については、基本に忠実であること、焦って段階を上げないこと、範囲を広げすぎないこと、ひたすら反復すること、生活習慣を大切にすることなどが強調されています。一見オーソドックスな内容ですが、ノートにこだわらない連想法や記憶法など、細部にオリジナリティがあります。なるべくシンプルな勉強法で、というのは、盲点な気がします。私が最も驚いたところは、「24年間左利きだったのを、論文試験のために右利きに変えた」というエピソードです。あと、試験本番の昼食は、「あんこ+団子」が小林流だそうです。
目標の設定に際して、小林君は「ゴール地点に巨大な鉄柱を、地中深く思い切り叩き込む」と表現します。肥大した上腕二頭筋を想像してしまいます。法科大学院の教授に「お前はここに一体何の勉強をしに来たんだ…」と呆れられたエピソードがあり、思わず笑ってしまいましたが、首席で卒業というあたりはさすがです。人間はちょっと過剰なくらいが面白いですね。
私が小林君に最後に会ったのは2010年頃だったと記憶しています。小林君も私も大学を留年し、フラフラしている時期で、渋谷でもつ鍋を食べました。その頃は、中高時代と変わらず、論理的なThe東大生、小柄で細身、という印象でした。しかし9年ぶりにテレビで見かけて、その変貌ぶりに目を疑いました。知能が高いだけの人材ならば、他にも沢山います。しかし、外見の説得力も大事でしょう。筋肉は、言葉と違い、人を欺くことができません。法律家の武器かつ弱点でもある言語を、彼は筋肉で補強しているように見えます。どうせ同じ報酬を払うなら、強くて面白そうな弁護士に頼もうと私ならば思います。
彼は2017年に弁護士登録をし、横浜市内の弁護士事務所で研鑽を積みました。その後、2019年7月に独立開業したそうです。その名も『法律事務所ストレングス』( https://www.law-str.com/ )。一瞬、ハムストリングスと見間違えました。筋肉の咆哮、法理の叫びが聞こえてきます。彼の地元・横浜で、一般民事・刑事事件に限らず、コスプレ関係の法律相談や、筋トレのパーソナルトレーナーまで、幅広い案件を取り扱っているそうです。収入も大事ですが、この柔軟さこそが、自由業の醍醐味なのかも知れませんね。栄光学園の嬉しいエピソードも随所で紹介されています。以上、小林航太弁護士のご紹介でした。今後の更なる活躍に期待しています!

三橋 敏順 (54期)

東大卒筋肉弁護士の超効率勉強法、小林航太著