寄稿・投稿27期、この1冊

27期は松村武人君(ペンネーム・芦崎笙)の執筆した「スコールの夜 芦崎笙・著」をご紹介します。
この本は「大企業の典型例であるメガバンクを舞台に、女性総合職第一期生が、本店初の女性管理職に抜擢されたものの、目の前の仕事は“長年採算の取れない従業員200名余の子会社の清算”」。しかも時間をかけて徐々にではなく、新頭取の意向で一気の整理・解雇という話です。
形ばかりのあてがいぶちの初の女性管理職ではなく、生々しい首切りの現場に放り込まれた主人公女性が、組織と清算される子会社の人間との狭間で苦闘します。
導入からグイグイと設定が刺さります。組織と雇用者、その背景。介護や不登校の家族を抱える者、訴訟リスク、メンタル不調など。かたや歴代トップたちの権力争い・軋轢・意思決定プロセス、そして会社清算に欠かす事の出来ない顧問弁護士など、様々な人物・課題が主人公女性の周囲に次々と現れます。
著者である芦崎笙(松村武人君)は著作時には財務省官僚で、彼の人生で見聞き・経験してきた事が生々しく描写されているのでしょう。第5回日経小説大賞を受賞したほど、そのデビューと作風は世の評価を受けました。推薦文を書いている私の会社でも原作にして、すぐにドラマ化(改題「ゴールドウーマン」・テレ朝動画で今でも視聴できます)。内容はエンターテイメント作品の味付けとなりましたが、小雪さん・鈴木保奈美さんらの女優陣の魅力が映える作品となりました。

意思決定に「女性の立ち回り」は?この「出世」が意味するところは? 日本社会で女性は男性と真に対等に闘っていけるのか――。
先の五輪組織委でのトップ発言に「女性が多い会議は長い」との蔑視発言がありました。現代でもなお、組織の中で女性が抱える問題は山積みです。
この2021年でも、読中に読後に問題提起となる作品です。皆さまが頁をめくりながら「自分はこう考える」との思いが浮かびながらの読書となるでしょう。
芦崎笙「スコールの夜」。「女性の時代」の闇にまで斬り込んだ特筆すべき作品です。是非お読み下さい。

佐藤 耕太郎 (27期)

広報部註:27期には他にも著作が多く、一覧にして掲載してほしい、との声が多くありました。すでにそのリストも受領しておりますが、他学年からも同様の声が挙がっていますので、広報部で対応を検討しております。同窓会ホームページ等で掲載する際には告知させていただきます。

スコールの夜、芦崎笙(松村武人)著