寄稿・投稿アイルランド紀行

ウェールズのホーリーヘッドよりアイリッシュ海を渡ってダブリンに着いた。まずトリニティ大学にケルズの書を見に行った。羊皮紙に書かれた聖書で渦巻模様と文字を組み合わせた図柄が美しい。
アイルランドの西側は崖が多く砂浜は少ない。島の東や南に多くの人々は住み、西側は小さな町しかない。
夏の間だけバスが通る処も多い。西のケリー半島巡りのバスに乗ってみた。
氷河期のU字谷が続き、山には木が一本もなく谷間の草原には羊や牛が放牧されている。
路は海岸の狭い崖の上を走っており、バスのすぐ下に荒海が続くので、かなり危険である。
翌日は隣のデングル半島を巡ってみた。各所に石を積み上げた小屋や礼拝堂が残っている。僧院もありケルトの碑が立っていた。
切り立った崖の続くモハ(Moher)の近くからアラン諸島に行く小船が出ている。東西にケルトの名を持つ三つの小島が並んでいる。一番近いイニシーア島は東の島の意である周囲10㎞の岩だらけの島で、港の近くだけに家がある。他は岩を積んで区切った畠が広がっている。
島には80の教会や150の城跡がある。村人が集まって綱引きとボートレースをしていた。ボートは獣皮を貼り合わせて黒いタールを塗ったものである。隣のイニシュマン島は真ん中の島が意で、ダンホンフルとダンフェアバイの二つの遺跡がある。大石を高さ5m幅2mで、径50mに積み上げた円形場がある。ダンホンフルは二重の円形で、内部に石を積んだ祭壇や窯のようなものが作られている。砦や祭祀場と思えるが、未だに解明されていない。
西端のイニシュモア島はケルト語で大きな島の意ある。島は平らで東西に細長く、平たく硬い石で覆われている。
砦のような遺跡もいくつかあり、中でもダンエンガスは規模が最も大きい。100m程の海に面した崖の上に石垣が三重に廻っている。
丘の上にあり、各々の石垣の間はかなり離れている。崖に向かって半円形に石垣が取り巻いているので、城としても堅固なものだが、崖に面する処には堤や石垣が無いので、かなり危険で、城ではなさそうである。
島は石や岩だらけで土壌が少ないので海藻を集めって厚く敷き詰め、その上にわずかな土を載せてジャガイモや野菜を作っていた。
アイルランド北部の山の上に石器時代のドルメンがいくつかある。細長い大石を5・6個立てて、その上に平らな大石をのせて載せたもので、古代の墓である。ドルメンの周りはストーンサークルが囲んでいる。
北のスライゴー(Sligo)より北アイルランドのジャイアンツ・コーズウェー行のバスに乗った。コーズウェーの海岸は六角形の石柱が海岸や崖に6㎞近く並んでおり壮観である。小規模のものは層雲峡や平戸の生月島(イクツキシマ)でも見られるが、こちらのものは一面に六角柱が続いており、見飽きることがない。
北アイルランドは紛争が絶えない様子でどこにもバリケードがあり監視の兵が並んでいた。

池添 博彦 (8期)