ホーム活動報告・会報記事寄稿・投稿新潟で消化器内科診療を通して感じる栄光学園とのご縁

寄稿・投稿新潟で消化器内科診療を通して感じる栄光学園とのご縁

先日、久しぶりに鎌倉で栄光時代の同級生と杯を酌み交わすことがありました。COVID-19もあり、約3年ぶりに親交を暖めることができました。道すがら、四半世紀ぶりに大船駅におりたち、かつてはなかった駅の構内の賑わい、洗練された駅ビルに時代の移ろいを感じざるを得ませんでした。久しぶりに栄光学園まで歩いてみました。こちらは駅とは打って変わって昔のままでした。坂は昔感じたほど長く感じず、しかしながら急峻で、休日で部活のためでしょうか、歩いている栄光生を眺めながら一緒に歩いて行きました。在校時とは違う校舎でしたが、初めて見る新たな校舎には昔の懐かしさを確かに感じさせる趣がありました。思えば栄光学園を卒業してから早いもので30年が経過しています。18才で、横浜を離れ、新潟に移ってからの方が私の人生の中で占める割合は圧倒的に大きくなりました。冬は厳しいですがその分、春を迎えた喜びが大きいなど四季が感じられ、日本海と信濃川に囲まれ、お米や魚、肉類、野菜などのおいしい食材が多くそろい、くつろげる温泉地も多い新潟は住めば都と実感しております。

新潟の地では、新潟大学の消化器内科で大学病院での臨床、臨床や基礎分野での研究、大学院生や医学生の教育をしております。新潟の地にありながらも、「消化器内科」、「新潟大学」、「研究」を通して母校である栄光学園を通してのつながりを実感しております。本日はそのことを記載させていただきたいと思います。

新潟では消化器内科全般の診療を行っておりますが、特に肝臓の分野の「肝再生」に力を入れております。先日、私が所属しております学会の一つに日本肝臓学会がありますが、その学会での医師の生涯教育目的の教育講演会で「肝硬変 合併症の治療」のお話をさせていただく機会がありました。その時、座長を務めていただきましたのが、26期ご卒業で、現在、埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科で教授を努めておられる持田智先生で大変緊張をしながら発表をいたしました。というのも私が、医師になってから、持田先生のご活躍に接する機会が非常に多く、OBの先生と知り、身近で肝臓分野で、リードしていただいた存在であったからです。日本肝臓学会では、副理事長を務められ、ウイルス性肝炎や肝不全の分野にて我が国の臨床をリードしておられる存在で、最近では「わが国における acute-on-chronic liver failure(ACLF)とその関連病態の診断基準」を作成されるなど多方面でご活躍されておられます。

新潟大学では学生時代所属していた野球部で、7期の橋本敬太郎先生にお世話になる機会がありました。以前橋本先生が、新潟大学にいらした際に野球部とつながりが有り、山梨医科大学(現山梨大学)薬理学の教授に移られてからもOB会などにご参加いただき、私はその際に大変お世話になりました。新潟大学消化器内科では、23期の秋山修宏先生がいらっしゃいます。秋山先生は内視鏡の名手で、新潟県立がんセンターでのご勤務の後に、県立加茂病院の院長を務められました。現在の新潟大学では、血液・内分泌・代謝内科の教授をされている32期の曽根博仁先生には、臨床や内科でのつながりで直接ご相談させていただく機会も多く、大変お世話になっております。曽根先生は、生活習慣病でビッグデータやAI活用を活用した先駆的なご研究が非常にご高名な先生で、多くの学会発表・論文などのお仕事が教室から出ており、若く生き生きとした教室というイメージを私たちは持っています。小児科には42期の山田剛史先生がいらっしゃいます。医局が同じフロアのため、お互い仕事で遅いときなどは励まし合っています。

研究では、31期の廣明秀一先生に大変お世話になっております。現在廣明先生は名古屋大学大学院創薬科学研究科にて、上皮のバリア機能を強化する薬剤の開発をされておられます。私の研究をしている肝臓の分野でも、肝硬変が進行してくると腸や血管のバリアが弱くなり病気の進行に関わることが知られており、その解決策を模索していたところ廣明先生とお話する事ができました。現在、共同でしっかりした研究ができないか予備的な検討をはじめている段階で、新たな学びを常に提供していただける心強い存在です。47期の慶応大学の松崎 潤太郎先生とも、研究で知り合うことができました。昨今、認知度が広がってきている、細胞外小胞(エクソソーム)の研究でつながりができ、特に血液中のマイクロRNAという物質の解析の分野でご活躍されています。

最近、とても大きく、うれしいニュースがありました。令和5年3月1日に先述の持田智先生が1898年(明治31年)に発足し、わが国では歴史が最も長い医学会の一つで現在会員数が36,181名、専門医23,333名に及ぶ日本消化器病学会の理事長にご就任されました。OBの先生では2期の鈴木博昭先生(元慈恵医大内視鏡医学講座教授)や4期の藤野雅之先生(元山梨大学医学部内科学講座第1教室教授)が道を切り開かれ、その後多くのOBの先生方が消化器分野でご活躍されており、持田先生の理事長ご就任をきっかけにますますOBの先生方のつながりが増えていくことを祈念いたしております。

このように、新潟の地に有りながらも、幸いなことに多くの栄光学園のOBの諸先生方とのご縁がありました。どの先生も共通して、非常に温厚でかつ強い芯をもって行動されているところを常に感じております。これからもこれまでのご縁、そして新たなご縁を大切にしながら、OBの一人として活動できればと思っております。

土屋 淳紀 (41期)