学園だより入学式から

学校長のことば(抜粋) 望月伸一郎校長

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。みなさんの入学を、栄光学園のすべての教職員が待っていました。
新入生のみなさんは、人生の中で、とても大切な選択をして、今ここにいます。日本にはたくさんの私立中学校がありますが、そのなかでみなさんは栄光学園を選んでくれました。そして選んだのは、みなさんだけではありません。2月に行われた入学試験で私たちもみなさんを選んだのです。それぞれが選びあったことで、私たちがここに出会うことができたということは、考えてみると本当に素晴らしいことだと思います。まさに相思相愛です。
さて、この時期は桜の花がきれいですが、栄光学園の敷地にも何種類かの桜があります。桜だけで実に600種類ほどあると言われていますが、校内の敷地を散歩していても、八重桜や枝垂れ桜など、今もまだ花をつけているものや、これから満開になる桜もあるのです。
みなさんも桜の花と同じです。いつどのような花が咲くのかは、みんな違うでしょう。早い人も遅い人もいるでしょう。
でも一人一人、それぞれにとって最もよい時期に、最もよい形で、その可能性や才能・能力が、これから花開いていきます。そして、それぞれの種類の桜は、開花の時期や花の色・形が違うからこそ、見る人たちの目を楽しませてくれ、見ている人に喜びを与えるのです。みなさんも、もうすでに自分自身の中に素晴らしい花の種を持っています。
聖書には次のような言葉が書いてあります。『あなた方は地の塩である。だが、塩に塩気がなくなれば、その塩は何によって塩味がつけられよう。(中略)あなた方は世の光である。山の上にある町は、隠れることができない。また、ともし火をともして升のしたに置く者はいない。燭台の上に置く。そうすれば家の中のものをすべて照らすのである。そのようにあなた方の光を人々の前に輝かしなさい。』
『あなた方は地の塩である』、『あなた方は世の光である』塩は、わたしたちの生活でとても身近なものにして、必要不可欠なものです。だからといって、普段の生活の中で、塩だけを口にいれることは、あまりありません。むしろ他の食材と一緒になることで、他の食材の味を引き立てていくもの、料理の中の味付けとなって初めて活きてくるものです。
ともし火としての光も、周りを照らし明るくすることによって、初めてその意味が生じてきます。私たちは誰もいない部屋の照明は消しますし、逆にわずかな灯りでもないと、何も見ることができません。

様々な植物の花が、見ている私たちに喜びを与えるのと同じく、塩や光は自分以外のものとの関係のなかで、はじめてそのかけがえのなさが現われるのです。
自分自身の存在を、自分以外の他者の幸せのために活かしていったときに、わたしたちは初めて地の塩、世の光となります。でも、自分はそんな塩や光になることはできるのだろうか、自分にはとても無理なのではないか、と思うかもしれません。しかし、先ほどの言葉をもう一度よく注意してみると、地の塩や世の光になりなさいとは言っていないのです。「あなた方は地の塩である」「あなた方は世の光である」と言っているのです。砂場の砂に向かって「塩になれ」といっているのではありません。実はもうすでにみなさんは「塩」であり、「光」なのです。周りを引き立たせること、周りを照らすことがすでにできるのです。
桜には何百種類もあるように、その塩味や光の種類は一人一人異なると思います。でも、みなさんはすでに塩であり光なのです。そのことを忘れずに、自信をもってこれからの6年間、栄光学園で学んでください。

新入生代表の言葉(抜粋) 76期 T.M.君

鎌倉の山々からは鳥のさえずりが聞こえ、 暖かな春がやってきました。 今日、私たち栄光学園第76期生も、 待ちに待った入学の日を迎えます。四月八日は四月の四(し)と 八日の八(はち)で「出発の日」でもあります。まさに、私たちの入学式にふさわしい日ではないでしょうか。いつも支えてくれる家族や、今日温かく迎えてくださった方々への感謝の気持ちを忘れずに、六年間過ごしていきたいです。

四年生のときには栄光祭に足を運び、きれいな校舎や広い校庭に圧倒され、受験してみたいと考えるようになりました。その後は新型コロナウイルス感染拡大のため、栄光学園のイベントなどに参加する機会はあまりありませんでした。しかし、そのような状況だったからこそ、これから新しい発見や楽しみがたくさんあるのではないかと、期待で胸がいっぱいです。
私は体を動かすことが好きなので、広い校庭で走り回ったり、友達と遊んだりすることがとても楽しみですし、運動部にも入りたいです。一方で、趣味である折り紙のサークルを立ち上げ、多くの人に折り紙の魅力、楽しさを伝えたいとも考えています。

ここで、私の折り紙についての考えをお話しします。私は幼い頃から折り紙が好きで、最近では少し難しい作品に挑戦することもあります。一見地味な折り紙ですが、そこから学ぶこともたくさんあります。それは、協力すること、ごまかさないこと、基礎・基本をしっかりと身につけることの大切さの三つだと思います。
折り紙の作品は、基本的には一枚の紙から折りますが、一枚の紙では表現できないものもあります。人間も、一人ではどう頑張ってもできないことがあります。何枚かの紙を使う作品や、パーツをたくさん組み合わせて作る作品のように人間も協力したり、人に頼ったりすることが大切です。
また、難しい作品を折っていると、分からない工程が出てきます。その工程を飛ばしたり、自分が折れるように簡単にしてしまうことがあります。日常生活でも、嘘をついたりごまかしたりしてしまうことが誰にでもあるでしょう。しかし、ごまかしたり、楽をしたりすれば、完成した作品からわかってしまいます。それは人間にも言えることだと思います。
そして、折り紙は、はじめに折り筋をつけることが最も重要です。折り紙の作品は折り筋を使って折っていくので、折り筋が雑だと汚い仕上がりに、折り筋が丁寧だと綺麗な仕上がりになります。折り筋が作品の仕上がりを左右するのです。人間も同じです。勉強やスポーツなど何事も基本が大切です。基本がしっかりしているかどうかによって、さらに成長できるかどうかが決まると言ってもよいでしょう。ですから、最初に折り筋を正確につけることが必要です。

私は栄光学園でのこれからの六年間の生活は、人としての基礎を学ぶ、つまり折り筋をつける期間だと考えています。栄光学園で正確に折り筋をつけ、ここにいる仲間たちと支え合い、いつも誠実でありたいと思っています。
今、世界は大変な状況に置かれています。誰も予想しなかったことが次々と起こり、様々な問題が発生しています。今は無力な私達ですが、「MEN FOR OTHERS,WITH OTHERS」の精神を身につけ、社会に貢献できる人になれるよう成長していきたいです。